XLogPの計算 (3)

先日、XLogPは「原子タイプの線形和と考える手法」に分類されると書きましたが、
実際どのように値が算出されるのか、例をあげつつ説明してみます。


きょうの分子は、市販かぜ薬に解熱鎮痛成分として含まれている
アセトアミノフェン (Acetaminophen)」です。


まず「原子タイプ(atom type)」という聞き慣れない専門用語が出てきましたが、
これは、分子中の構成原子がどのような環境にいるかをグループ分けしたものです。
元素の種類、結合の種類、芳香性の有無、結合している窒素/酸素/水素の数、などで類別されます。


XLogPでは、およそ100種類の原子タイプに重み付け係数がそれぞれ設定されていて、
これを掛けたあと、すべての原子について足し合わせます*1。つまり、
 Σ{ (重み付け係数) x (原子タイプの数) }
という線形和により、XLogPが計算されます。
これらの係数値は、先行論文において(もっぱら回帰分析により)決定されたものです。


アセトアミノフェンの場合、それぞれの原子タイプに対応する係数が下図のようになっており、

XLogP = (0.267) + (-0.030) + (-0.399) + (-0.096) + (-0.151 x 2) + (0.337 x 4) + (-0.467)
   = 0.321
と計算されるわけです。なお、実測値は0.4です。


以上、簡単な例で示しましたが、特殊な構造を持つ分子の場合、さらに補正項が加わります。
XLogPで補正されるパターンとして

などが考慮され、やはりこれらの項目にも、それぞれ重み付け係数が設定されています。


XLogP = Σ{(重み付け係数) x (原子タイプの数)} + Σ{(補正項の重み付け係数) x (補正パターンの数)}

*1: Wang et al. A New Atom-Additive Method for Calculating Partition Coefficients. J. Chem. Inf. Comput. Sci. (1997) 37, 615-621